
ワンマンオペレートで動画撮影をおこなっていると、「もっと安定させたい」と「もっと身軽に動きたい」という、相反する要求に何度もぶつかります。
フルリグを組めば安定感は得られますが、設営と撤収に時間を取られ、1人で回す現場では現実的とは言えません。一方で、軽量なプレート運用では、パンやチルト時の微振動が気になる場面も出てきます。
本ブログ記事では、三脚撮影を主軸としたワンマンオペレート動画において、「理想を盛りすぎず、削りすぎない」現実的な解として、ブログ管理人が実践している標準ズームレンズ向けミニマム動画リグを紹介します。
動画品質、設営効率、機材管理のバランスを重視し、低コストかつ再現性の高い構成を、思想と運用の両面から解説していきます。
Text/Photo:ちゃんまさ
ワンマンオペレートによる動画撮影を前提
ワンマンオペレートで動画制作をおこなう場合、撮影だけでなく機材準備、設営、撤収、トラブル対応まで、すべてを1人で管理する必要があります。とくにフリーランスや個人制作者の場合、限られた時間と体力の中で結果を出すことが求められます。
三脚を使った動画撮影では安定性が最優先となるため、理想を追えば構成は複雑になりがちです。しかし構成が重くなるほど、設営と撤収に時間を取られ、撮影テンポは確実に落ちます。
映画的な動作撮影を想定した「フルリグ」は魅力的ですが、毎回1人で組み上げる運用は現実的とは言えません。1人で動画撮影を回す現場では、理想を削り「撮り切る」ための妥協と優先順位付けが重要になります。
軽量プレートによる運用の限界

ブログ記事「ソニーαで写真と動画を両立する三脚固定法【アルカスイス併用の完成形】」で解説した、三脚固定をプレートのみで完結させる軽量運用は、写真と動画を頻繁に行き来する現場では非常に有効な方法です。機材の付け替えが速く、持ち運びも容易なため、取材やスチル併用案件では大きなメリットがあります。
一方で、この構成は「写真と動画の両立」を最優先にした結果、動画撮影における剛性面では最低限の妥協を含んでいます。とくに、三脚に据えてパンやチルトをおこなうと、レンズ重量やマウント部の撓みが微振動として現れる場面があります。
動画品質を重視する現場では、こうした微細な揺れが「動画品質」に直結します。そのため、写真との兼用を捨て、手持ち撮影も前提から外した「動画特化構成」を検討する価値があります。ここからは、ワンマンオペレート向けに最適化したリグ構成を考えていきます。
標準ズームレンズ向けミニマム動画リグとは
ブログ管理人が実践しているのは「標準ズームレンズ向けミニマム動画リグ」という考え方です。
これは、プレートのみで完結する軽量運用と、フル装備の重量級リグの中間に位置する構成です。動画品質を確保しつつ、ワンマンオペレートでも現実的に扱える最小構成を目指します。
本構成では、重量増加やシステムの煩雑さを避けるため、フォローフォーカス機構は搭載しない前提とします。標準ズームレンズであれば、高性能なAFを基本としつつ、必要に応じてマニュアルフォーカスや露出調整をおこなうことで、多くの撮影シーンに対応できるからです。本構成は「すべてを盛らない」という取捨選択が、安定したワンマン撮影につながります。
おもな構成要素は、剛性を確保するためのロッド、工具不要で調整できるレンズサポート、そしてアルカスイスクランプによる素早い着脱機構です。この最小限の構成によって、三脚動画撮影で破綻しない剛性と、撮影現場での機動力を両立させます。
ミニマム動画リグの紹介
こちらは、ソニーα1 IIにFE 24-105mm F4 G OSSを装着し、「標準ズームレンズ向けミニマム動画リグ」を組んだ状態を例に解説します。
プレートのみの軽量運用では不足しがちな剛性を、最小限のリグ構成で補うことを目的としています。フルリグほどの重量増加や煩雑さは避けつつ、三脚に据えた安定感を確保する「中間グレード的」な使い方を狙った構成です。

レンズ先端側は、SmallRig製レンズサポートを用いて支持しています。カメラ底面とレンズ先端側の2点支持構造にすることで、パンやチルト時に発生しやすいピッチング方向の微振動を大幅に抑えられます。これは、動画撮影において体感できる差が出やすいポイントです。
レンズサポートは工具不要で高さや前後位置を調整できるため、標準ズームレンズの交換や位置調整も短時間でおこなえます。ワンマンオペレートでは「素早く戻せる」ことが、そのまま撮影テンポの維持につながります。
使用したパーツと役割

SmallRig 多用途Uベース(1674)
三脚座と雲台プレートの間に挟み込み、接地面積を広げて固定力を高めるための土台として使用しています。拡張用途には使わず、あくまで「動かないための構造材」として割り切っています。
SmallRig レンズサポート(BSL2680)
標準ズームレンズの先端側を支え、マウント部だけに負荷が集中する状態を避けるための要となるパーツです。高さ調整が可能で、無理なテンションをかけずに支えられる点を評価しています。
SmallRig 15mmロッド
Uベースとレンズサポートを最短距離で接続するために使用しています。余分な長さを持たせず、ねじれ要素を減らすことで、構成全体の剛性を底上げしています。
アルカスイス互換クイックリリースシステム
カメラ本体はアルカスイス規格で着脱できる構成とし、リグを組んだ状態でもカメラの取り外しやレンズ交換を容易にしています。
マンフロット互換クイックリリースプレート
ビデオ雲台側では、前後バランス調整が可能なビデオプレートを使用し、動画撮影時の操作性と安全性を確保しています。
組み立て方

SmallRig 多用途Uベース(1674)にアルカスイスクランプを1/4インチネジで固定します。

SmallRig 多用途Uベース(1674)の座面にマンフロット互換クイックリリースプレートを固定します。

固定は2箇所(1/4インチと3/8インチネジ)で行い、剛性を確保します。

SmallRig 多用途Uベース(1674)に15mmロッドを装着。ロッドにSmallRig レンズサポート(BSL2680)を装着したら完成です。
アルカスイスクランプで分離可能に固定する発想
このシステムの最大の特長は、リグとカメラを一体化しない点にあります。アルカスイス規格のクランプを活用することで、リグを三脚に据えたまま、カメラとレンズだけを簡単に分離(着脱)できる構成としました。

ビデオ雲台にはリグを装着したまま、アルカスイス互換クランプを緩めることで、リグを雲台に固定したままカメラとレンズだけを素早く取り外せます。リグ全体を持ち上げたり、配線や構成を崩したりする必要はありません。
この分離構造により、現場で一時的に手持ち撮影が必要になった場合でも、撮影後すぐに三脚上のリグへ復帰できます。位置合わせや再調整に時間を取られず、パンやチルトのセッティングを保ったまま撮影を再開できる点は、ワンマンオペレートにおいて大きな利点です。
機動力そのものよりも、「元の状態に迷わず戻れること」。この考え方が、ミニマム動画リグを実戦向けの構成にしています。
レンズ交換を簡略化する運用
本格的な動画リグでは、カメラを固定したままレンズ交換をおこなうのは、手間もリスクも大きくなります。配線やアクセサリーを避けながら作業する必要があり、ワンマンオペレートでは心理的な負担にもなります。
この「標準ズームレンズ向けミニマム動画リグ」では、工具無しで調整できるレンズサポート部品を採用することで、撮影中でも迷わずレンズ交換がおこなえる構成としました。

ビデオ雲台にはリグを装着したまま、アルカスイス互換クランプを緩めることで、カメラとレンズを素早く取り外します。リグ全体を動かす必要がないため、撮影準備の状態を保ったまま作業できます。

レンズを交換します。レンズに合わせて、レンズサポートの位置と高さを調整します。工具を使わずに調整できるため、余計なテンションをかけることなく、短時間で元の撮影状態に復帰できます。

要領を掴めは、レンズ交換は1分程度で行えます。
この運用により、リグを使用したワンマンオペレートでも、撮影テンポを崩さずにレンズ交換がおこなえます。「交換できる」ことよりも、「交換をためらわなくて済む」ことが、この構成の最大の価値です。
低コストでリグ構築する考え方
この「標準ズームレンズ向けミニマム動画リグ」は、専用品で固めることを目的としていません。既存の三脚や雲台をそのまま使い、必要な部分だけを汎用パーツで補う構成としています。
動画撮影において重要なのは、価格の高いアクセサリーを増やすことではなく、「どこに剛性が必要か」を見極めることです。本構成では、剛性に直結する部分にだけコストをかけ、それ以外は割り切っています。
結果として、追加パーツの総予算は1万円程度に収まります。ワンマンオペレートやフリーランスにとって、導入しやすく、運用を継続できる現実的なラインです。
「安く済ませる」ためではなく、「無駄な投資をしない」ための低コスト構成。それが、このミニマム動画リグの基本思想です。
このリグ構成が向いている人
このリグ構成は、動画重視で三脚撮影をおこなうワンマンオペレーターに向けた実践的な提案です。軽量さよりも安定性を優先しつつ、フルリグほどの重量や準備負担は避けたい人に適しています。
三脚を基本としながらも、現場で発生しやすい「一時的な手持ち撮影」や「撮影中のレンズ交換」に対応できる点が特長です。構成を崩さず、短時間で元の撮影状態に復帰できるため、撮影テンポを維持しやすくなります。
一方で、重量級の望遠レンズを常用する場合には、より剛性を重視した別構成が必要になります。望遠レンズの動画撮影における三脚座の剛性問題と、その解決方法については、「望遠レンズの動画撮影で起きる三脚座の剛性問題とリグによる解決法」をご覧ください。






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