電子レンジを低価格な中型ポータブル電源で車載運用【カメラマンの車中泊 4】

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アクセサリー

Text/Photo:ちゃんまさ

人気のポータブル電源ですが、数ある電化製品の中でも「電子レンジ」を動かすのは難易度が高く、相応のノウハウが必要です。というのも、安価なポータブル電源に安価な家庭用電子レンジを接続しても、動作しない可能性が高いからです。多くの人に手が届く「中型ポータブル電源」を基軸に、電子レンジを使用するためのシステム選びを実践してみました。

とりあえず結論

中型ポータブル電源でも、ヘルツフリーの小定格出力の電子レンジを購入すれば動作する可能性が高くなります。テストの結果、BLUETTI EB70SとECOFLOW RIVER Proは、山善YRL-F180を動作することができました。しかし、正規の家庭用コンセントで使用した状態に比べ、EB70Sは作動音が大きく、RIVER Proは不安定な挙動を示しました。どのように判断されるかは、個々のユーザーにお任せします。

中型ポータブル電源で電子レンジを使用するには・・・
インバーター式の小定格出力の電子レンジを選べばどうにか動く!

※出力ギリギリを狙ったシステムになります。ファームウェア更新に伴う仕様変更・バッテリー劣化等により使用できなくなる可能性があります。責任は負えませんので「自己責任」でお願いします。

※ポータブル電源界隈には「リン酸鉄警察」が巡回し、啓蒙活動を行なっています。BLUETTI EB70Sはリン酸鉄電池、 RIVER Proは三元系リチウム電池を使用しています。一般的には、リン酸鉄バッテリーの方が安全性が高く高寿命といわれています。

ポータブル電源で電子レンジが動かない理由

電子レンジは、本来家庭用100V電源(100V12A)で使用することを前提に設計されており、ポータブル電源を想定した設計はなされていません。そのため、ポータブル電源で電子レンジを安定的に使用するには、家庭防災用に設計された「大容量ポータブル電源」を導入するのが定番です。

小型〜中級クラスのポータブル電源は、定格出力やサージ能力の関係で、電子レンジの運用は厳しい状態です。また、家庭量販店で「この電子レンジはポータブル電源で使用できますか?」と尋ねても、明確な回答は得られません。そのあたりは、自己解決しなくてはなりません。

家庭防災用ポータブル電源を購入するのが一番確実ですが、価格が高価な上、重量も20kgオーバーになるので気軽に持ち運べられない問題と直面します。そこで、システム総額10万円以下で電子レンジを運用できる製品を探してみました。

電子レンジのトランス式とインバーター式

電子レンジを選別する前に、電子レンジには2タイプの構造があることを知っておくことが重要です。詳しい解説は省略しますが、電子レンジにはトランス型とインバーター型があります。ポータブル電源と相性が良いのは「インバーター型」です。

トランス型は「起動電力」が大きい傾向にあり、電源が入る一瞬、大電力を必要とします。小型〜中型クラスのポータブル電源はこの「一瞬の大電力」に対応できず、保護回路が動作する要因となり、電子レンジが動作しません。

見分け方

次は、トランス型とインバーター型を見分ける方法です。一般的に、1万円前後の安価な製品はトランス型が多い傾向にあります。ネット検索して、同一製品で東日本用(50Hz)と西日本用(60Hz)の2種類ある製品は「トランス型」の可能性が高くなります。

数ある製品の中からインバーター型を選別するポイントは「ヘルツフリー機能」を備えた製品を探し出すことです。50Hzと60Hzに対応する製品は「インバーター型」を採用している確率が高くなります。ただし、価格はトランス型に比べて高価になります。

ポータブル電源の定格出力と瞬間最大出力

最後に、定格出力とザージ能力がポータブル電源の仕様に収まることを確認します。

電化製品の中でも、モーターや発熱を伴う機器は、一般的に起動時に大きな電気を必要とする傾向にあります。電子レンジの場合、トランス型はこの起動電力がインバーター型にくらべて大きくなります。

ポータブル電源の仕様表を見ると、その製品がどのぐらいの起動電力に耐えられるか記載されています。

電子レンジ仕様表の表記 ポータブル電源仕様表の表記
定格出力 定格出力
起動電力 ※基本的に非公開 瞬間最大・最大・サージ

ポータブル電源の仕様表に記載された「瞬間最大(サージ)W」の数値が、そのポータブル電源が対応できる起動電力になります。

中型ポータブル電源の「定格出力とサージ能力」

BLUETTI EB70S

中型ポータブル電源で人気のBLUETTI EB70Sの仕様表をチェック。

BLUETTI EB70S
定格出力 800W
瞬間最大 1,400W

BLUETTI EB70Sで電子レンジを使用する場合、定格出力800Wかつ起動電力の少ないインバーター型をチョイスすれば仕様的にネイティブ動作する可能性があります。

BLUETTI EB55

BLUETTI EB70Sより1サイズ小さいBLUETTI EB55をチェック。

BLUETTI EB55
定格出力 700W ※出力不足
瞬間最大 1,400W

定格出力700W。わずか100Wの差ですがBLUETTI EB70Sより定格出力が低く、電子レンジを動作させることは仕様的に困難です。

ECOFLOW RIVER 2 Pro

ECOFLOW RIVER シリーズの新型大容量モデル「RIVER 2 Pro」。

ECOFLOW RIVER 2 Pro
定格出力 800W
瞬間最大 1,600W
X-Boost 1,000W

BLUETTI EB70S同様、定格出力800Wなので起動電力の少ないインバーター型をチョイスすればネイティブ動作する可能性があります。また、X-Boostを使用すれば、出力を絞って使用できそうです。

ECOFLOW RIVER Pro

ECOFLOW RIVER シリーズの旧型モデル「RIVER Pro」。

ECOFLOW RIVER Pro
定格出力 600W ※出力不足
瞬間最大 1,400W
X-Boost 1,200W

定格出力600Wなので電子レンジをネイティブ動作させることは仕様的に困難です。X-Boostを使用すれば、出力を絞って使用できそうです。

ポータブル電源で電子レンジを使用するノウハウ

日本の家庭用電源は、地域によって50Hz地域と60Hz地域があります。トランス式電子レンジは、50Hz用と60Hz用の2つの仕様が存在します。そのため、同一型の製品でも60Hz地域専用品は、50Hz地域で動作しません。

いっぽう、インバーター式電子レンジは、50Hz地域と60Hz地域の両方に対応できます。ポータブル電源は、出力を50Hzと60Hzに切り替えられるため、インバーター式電子レンジを50Hzで運用すれば、低出力で駆動できるわけです。

800Wで動作する中型ポータブル電源は少ない現実

BLUETTI EB70SやECOFLOW RIVER 2Proの定格出力は800W。電子レンジを使用する場合、60Hz設定では出力上限を超えますが、50Hz運用すればギリギリ800Wに収まります。起動電力の数値は公開されていませんが、BLUETTI EB70Sの最大出力は1,400W対応なので動作する期待が高まります。

いっぽう、BLUETTI EB55の定格出力は700W。わずか100Wの違いですが、50Hz運用時でも800Wを満たすことができず、使用不可判定になります。

安価なインバーター式電子レンジを探す

山善 YRL-F180

「インバーター型・小定格出力・安価」の条件で電子レンジを検索すると、対象製品が皆無に等しく苦労します。ようやく発見したのが、山善「YRL-F180」。実際に仕様表を確認すると・・・

山善 YRL-F180
消費電力 800W(50Hz)・1,050W(60Hz)
起動電力 記載なし
対応エリア ヘルツフリー

消費電力は、50Hzで800W、60Hzで1,050Wです。50Hzで950W前後の製品は見つかりますが、インバーター型で800Wは貴重な存在です。

ヘルツフリー表記があるので、トランス型ではなくインバーター型を採用した製品と推測できます。

価格は、大手家電量販店で1万2000円程度と比較的安価。同一価格帯でインバーター型を採用する製品は皆無なので「ポータブル電源御用達」と言えそうです。

実証テスト

BLUETTI EB70S編

BLUETTI EB70SのAC出力設定を50Hzに変更します。

BLUETTI EB70S
AC出力設定 50Hz出力に変更

BLUETTI EB70Sで山善YRL-F180は動作しました。消費電力は800Wを少し下回る数値で推移。

ただし、電子レンジ作動中は駆動音が大きくなります。家庭用コンセント駆動時と明らかに異なることが気になります。

ECOFLOW RIVER Pro編

ECOFLOW RIVER ProのAC出力設定を50Hzに変更します。

ECOFLOW RIVER Pro
AC出力設定 50Hz出力に変更

ECOFLOW RIVER Proでも山善YRL-F180は動作しました。消費電力は、X-Boost機能により500〜600W前後で稼働します。稼働中は、出力が前後するため照明の明るさが変化します。また、本来800Wで動作するところを少ない出力で稼働するため、加熱時間が長くなります。

BLUETTI EB70Sのような大きな駆動音は鳴りませんでした。

車中泊で電子レンジが使える最小パッケージ

BLUETTI EB70S+山善YRL-F180の組み合わせが、私が実際に検証した「最小・最安値のパッケージ」になります。ECOFLOW RIVER Proも動作しましたが、X-Boostによる電力が絞られるため、温めるために必要な時間が2〜3倍ぐらいに長くなりました。

BLUETTI EB70Sは、セール時期に6万円前後で購入できます。また、山善YRL-F180は、家電量販店で1万3000円程度で販売中です。合計8万円以下でキャンプや車中泊で電子レンジが使用できます。

安心・安全・確実を重視するなら大容量ポータブル電源を購入するのが確実ですが、1500W以上の製品は15万円前後が相場。さらに電子レンジを同時購入すると、想像以上にコストが膨らみます。「BLUETTI EB70S+山善YRL-F180」の組み合わせは、約半分のコストで導入できるのでオススメです。

作動音が大きくなる点は気になりますが、1万3000円で購入した製品なので壊れたら諦めるつもりです。

この記事を書いた人
ちゃんまさ

雑誌編集部勤務を経て、個人制作会社を設立。30年以上にわたり雑誌取材、企業の企画執筆・写真撮影・TV番組の撮影などに従事。業務で得た経験や知見をもとに、カメラ・写真レタッチ・動画編集・商品レビューなどの情報を発信します。

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