タムロン35-150mm F/2-2.8 Di III VXDは動画撮影向きの銘玉かも

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レンズ

タムロンから、ソニーEマウント(フルサイズ)交換レンズ「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」(Model A058)が発売されました。「35〜150mm」という個性的な焦点距離と明るい開放絞り値は、メーカー曰く「ポートレート用レンズ」とアピールします。この注目のレンズを、MTF曲線などをチェックしながら考察しました。

スペック表

画像引用:タムロン

モデル名 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)
焦点距離 35-150mm
明るさ F2~2.8
レンズ構成 15群21枚
ガラス素材 ガラスモールド非球面レンズ3枚
LDレンズ4枚
最短撮影距離 0.33m (WIDE) / 0.85m (TELE)
最大撮影倍率 1:5.7 (WIDE) / 1:5.9 (TELE)
フィルター径 φ82mm
最大径 φ89.2mm
長さ(マウント面) 158mm
質量 1,168g
モーター リニアモーターフォーカス機構VXD
レンズ内手ぶれ補正 なし
プリセットボタン あり
スイッチボックス AF ON/OFF カスタム1/2/3
専用ソフトウェア タムロンレンズユーティリティー
対応
本体外観仕上げ 塗装仕上げ
絞り羽根 9枚 (円形絞り) ※2絞り分まで
最小絞り F16-22
標準付属品 花型フード、レンズキャップ
希望小売価格 229,900円(税込)
発売日 2021年10月28日

レンズ仕様は最新トレンド投入

35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)の特徴は、標準ズーム+αの望遠域を中望遠の領域まで拡大し、相反する解放絞り値をF2〜F2.8に収めてきたこと。キヤノン純正レンズに「RF28-70 F2 L USM」が存在するが、このレンズは望遠域を約2倍に拡大したことになる。

同社レンズラインナップには「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071)」のように画質よりも使い勝手を優先した便利ズームがあるが、このレンズは画質と明るさを重視したプレミアムレンズです。繊細な描写を得るため光学系に高性能硝材を使い、フォーカス駆動用モーターにリニアモーターを採用。最新のミラーレス一眼用レンズの最新トレンドが盛り込まれた仕様に仕上げられました。

ズームリングの回転方向は純正と同じ

ズームリングは、ソニー純正と方向に設計されています。逆方向のシグマ製品よりも使い勝手は間違いなく向上します。また、ズームリングが広角端から望遠端まで少ない角度で変化する設計になっているので、素早いズーム操作が期待できます。

1,168gのド級ボディ

解放F値と光学性能を追求した弊害は、本体重量1,168gに巨大化しましたが、キヤノン純正「RF28-70 F2 L USM」が1,430gであることを考慮すると涙苦しい軽量化が行われたと推測できます。

それでも、同社70−180mm F2.8(Model A056)が810gに抑えられているので「重量を苦にせず使用できるか?」が評価の分かれ目になりそう。対象ユーザーは、ハイアマチュアから業務ユーザーに限定されるでしょう。

筐体が望遠ズーム並みのサイズなので「ストリートで気軽に撮影できるとは言いがたい」といのが個人的な本音です。

フィルターサイズはφ82mm

タムロンF2.8通しレンズといえばフィルターサイズは「φ67mm」という定説ですが、このレンズは「φ82mm」。すでにタムロンF2.8通しレンズを所有するユーザーは、別途フィルター類を用意する必要があります。

レンズ内手ぶれ補正は未搭載

手ぶれ補正機能は搭載していません。カメラ内手ぶれ補正のみで防振します。ボディ手ぶれ補正機能を搭載していないカメラに装着すると、手ぶれ補正機能が一切動作しないので注意が必要です。

カメラ内手ぶれ補正機能を搭載していないカメラ
●α6400
●α6100
●VLOGCAM ZVE10 など

AF&プリセットボタン付

画像引用:タムロン

鏡筒にAF&プリセットボタンを採用

タムロンのソニーEマウント用レンズは、絞り開放F値2.8通しの高価なレンズを徹底したコストダウンをおこない、純正を購入するのは無理だけどもう少し予算を付け足せば「絞り開放F値2.8のレンズに手が届く」という絶妙な位置付けのレンズです。

デメリットは、コストダウンのためAF切り替えスイッチやプリセットボタンが省略され、各種変更はカメラ側で都度行う必要があります。使い勝手の良さが切り捨てられたため、忙しい現場においては「使いづらい」という評価があったのも事実です。

35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)は、同社150-500mm(Model A057)同様、レンズ鏡筒に「AFモード切替スイッチ」や「プリセットボタン」を採用。プロフェッショナルからハイアマチュア層まで満足できる操作性を実現しました。

AFモード切替スイッチは縦位置撮影を優先!?

商品写真を見た時「AFモード切替スイッチとカスタムスイッチは逆の方が良いのでは?」と思いましたが、ポートレートレンズということで、縦位置撮影時の操作性を重視したと思われます。

リニアモーター採用

画像引用:タムロン

リニアモーターで静粛&高速AFを実現

35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)のAF駆動用モーターは、最新トレンドであるリニアモーターを採用。初動動作の速さと正確な位置に停止できる特性があるため、AF-Cの速度&精度の向上を期待できます。

リニアモーターは、フォーカス時の作動音が静粛なので動画撮影でも絶大な効果を発揮します。

焦点距離別 開放F値

タムロンの公式ツイッターアカウントで、焦点距離別F値が紹介されていました。

画像引用:タムロン

30〜40mm F2
40〜60mm F2.2
60〜80mm F2.5
80〜150mm F2.8

ポートレートレンズをアピールする当製品だけに、使用頻度の高い焦点距離は85〜100mmの領域だと思われます。85mmの解放F値はF2.8。85mm単焦点の解放F値は「F1.4〜F1.8」が一般的なので、少し暗いスペックになります。

しかし、解放F値でポートレートを撮影するとピントが浅すぎ、顔全体にピントを合わせるためにはF2.8ぐらいまで絞るのが一般的です。また、ソニー純正のSEL85F18やSEL85GMは、絞り開放ではパープルフリンジが顕著に現れるため、同様に少し絞って撮影します。

35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)は、85mmのMTF曲線をチェックすると、85mmを絞り開放から高精細に撮影できる解像度を期待できます。85mm単焦点「F1.4〜F1.8」の薄いピントは得られませんが、焦点距離を150mmにすれば、被写界深度の狭い表現もできるのでポートレンズとして十分すぎるポテンシャルを発揮してくれでしょう。

単焦点レンズに換算すると4本分

タムロン35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)は、下記単焦点レンズ4本が1本のズームレンズに集約されたと理解できます

35mm F2 50mm F2.2 85mm F2.8 150mm F2.8

35mm比較

画像引用:ソニー・タムロン

35mm単焦点レンズは、ソニー純正「FE35mm F1.8(SEL35F18F)」のMTF曲線と比較しました。

MTF曲線は、絞り開放からModel A058が圧倒的に優れます。ただし、30本/mmと10本/mmのラインがかけ離れているので、ズームレンズらしいMTF曲線といえます。

85mm比較

画像引用:ソニー・タムロン

85mm単焦点レンズは、ソニー純正「FE85 mm F1.8(SEL85F18)」のMTF曲線と比較しました。

MTF曲線は、絞り開放からModel A058が圧倒的に優れます。30本/mmの数値がAPS-Cサイズの領域でコントラスト値0.8を記録しているので相当シャープな描写です。30本/mmと10本/mmのラインが一致しているので、単焦点レンズに類似した描写が期待できそうです。

150mm比較

画像引用:ソニー・タムロン

150mm単焦点レンズは、ソニー純正レンズに設定のない焦点距離なので「FE 135mm F1.8 GM(SEL135F18GM)」のMTF曲線と比較しました。

MTF曲線は、30本/mmの数値がAPS-Cサイズの領域でコントラスト値0.75を記録しているので相当シャープな描写です。30本/mmと10本/mmのラインが一致しているので単焦点レンズに類似した描写が期待できそうです。ただし、周辺部(フルサイズ)はコントラスト値0.6まで悪化します。

FE 135mm F1.8 GM(SEL135F18GM)のMTF曲線と比較するのは酷ですね。

美味しい焦点距離は85mm!?

画像引用:ソニー・タムロン

やっぱり大きい鏡筒サイズ

タムロン35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)のもっとも美味しい焦点距離は85mm。85mm〜150mmの領域のMTF曲線は、単焦点レンズに類似した設計になっています。開放絞り値F2.8に納得できれば「アリ」な製品といえそうですね。

ただし、150mmという焦点距離は扱いが難しい領域です。ポートレートで全身ショットを撮影するには望遠レンズ並みのワーキングティスタンスが発生するため「85mm感覚」で撮影すると「顔のドアップ写真」を量産することになります。アップ中心に撮影するなら、すでに所有していると思われる70-200mm F2.8で十分ですからね。

ワイド領域を使った「風景と人物からめたポートレート」を積極的に撮影することが、このレンズのメリットを活かすポイントになりそうです。

気になる点は、1kgを超えるレンズ重量と望遠レンズを彷彿とする鏡筒サイズ。85mm前後で使用する場合、FE85 mm F1.8(SEL85F18)はわずか371gです。鏡筒サイズも70-200mm F2.8に迫るサイズ感なので「気合」が必要ですね。

動画用レンズに最適な予感

画像引用:ソニー・タムロン

動画用にも使える1本

個人的な見解になりますが、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)は、動画撮影においても本領を発揮できるレンズだと思います。レンズが重いのでリグを組むなどして重量バランスを整える必要がありますが、35mmから150mmまで「単焦点レンズ並みの解放絞り値」で収録できれば、これ1本で「背景ボケボケ」の映像を手軽に収録できます。

また、動画撮影の場合、APS-Cモードを選択しても無劣化で収録できます。クロップ機能を活用すれば、望遠端が225mmまで拡大できます。さらに超解像ズームで300mmまで収録できるので「手抜き撮影」ができる奥深さも備えます。

ソニー純正レンズに、ムービー用「FE PZ 28-135mm F4 G OSS(SELP28135G)」というレンズがあります。電動ズーム付きの唯一無二の存在ですが、電動ズームを妥協できるなら「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)」で代用できます。MTF曲線や開放絞り値も35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Model A058)が優れます。

動画撮影の場合、撮影現場でレンズ交換を行うと撮影素子にダストが付着し、撮影素材が全損する恐れがあります。画質は写真ほどシビアでないので、ズームレンズのメリットが増幅されます。

可変NDフィルターを1枚用意すれば、仕事の現場で即戦力として使えることを予測します。

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